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とにかく、リティアはヴェルターと悪女様が幸せになってから恋をしようと結論を出したのだった。それから、ヴェルターに対しての違和感についても考えた。ヴェルターは態度に出さないように努めているし、リティア以外にこの違和に気づく人はいないだろう。だが、確実におかしい。リティアは確信していた。ヴェルターはなぜ、リティアに対しての態度が不自然なものになったのか。特にここ最近は会うのが憂鬱になるくらいだ。
ひょっとして、自分が気づいていなかっただけで、ヴェルターはもう悪女に出会っているのではないだろうか。
「……まさかね」
悪女として目ぼしい人はいなかったはず。だけど、王太子とリティアの結婚までそんなに時間があるわけではない。この一年でなにかしら動きがあるだろう。自分は今何ができるのだろうか。
昔のヴェルターは、もっと……。屈託ない笑顔。その笑顔は彼の心のうちが顔ににじみ出たものだった。
「可愛い笑顔だった」
前歯の抜けた決まらない笑顔を思い出し、リティアは笑みが零れた。それから、今のヴェルターのそつのない笑顔が重なって、リティアはふうっと息を吐く。
「相変わらず、神々しいまでの容姿よね」
それから、対照的なシュベリー卿の黒髪を思い出した。彼もまたヴェルターとは真逆の色合いなのに神々しく見えた。
不思議ね……、初めて会った人に懐かしい、なんて。リティアはいつの間にか意識を手放し、眠りについた。
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