第3話 秀抜な男性と偶発的を装った何らかの力が働いた計画的出会い。

16/16

676人が本棚に入れています
本棚に追加
/200ページ
 とにかく、リティアはヴェルターと悪女様が幸せになってから恋をしようと結論を出したのだった。それから、ヴェルターに対しての違和感についても考えた。ヴェルターは態度に出さないように努めているし、リティア以外にこの違和に気づく人はいないだろう。だが、確実におかしい。リティアは確信していた。ヴェルターはなぜ、リティアに対しての態度が不自然なものになったのか。特にここ最近は会うのが憂鬱になるくらいだ。  ひょっとして、自分が気づいていなかっただけで、ヴェルターはもう悪女に出会っているのではないだろうか。 「……まさかね」  悪女として目ぼしい人はいなかったはず。だけど、王太子とリティアの結婚までそんなに時間があるわけではない。この一年でなにかしら動きがあるだろう。自分は今何ができるのだろうか。  昔のヴェルターは、もっと……。屈託ない笑顔。その笑顔は彼の心のうちが顔ににじみ出たものだった。 「可愛い笑顔だった」 前歯の抜けた決まらない笑顔を思い出し、リティアは笑みが零れた。それから、今のヴェルターのそつのない笑顔が重なって、リティアはふうっと息を吐く。 「相変わらず、神々しいまでの容姿よね」  それから、対照的なシュベリー卿の黒髪を思い出した。彼もまたヴェルターとは真逆の色合いなのに神々しく見えた。    不思議ね……、初めて会った人に懐かしい、なんて。リティアはいつの間にか意識を手放し、眠りについた。
/200ページ

最初のコメントを投稿しよう!

676人が本棚に入れています
本棚に追加