第4話 王子、苦悩する

4/10

676人が本棚に入れています
本棚に追加
/200ページ
 同じころ、頭の痛い案件がヴェルターを悩ませていた。  隣国、ラゥルウントのことだ。  フリデン王国は隣国ラゥルウントのと国堺に広大な鉱山を有していた。  この鉱山を有する山脈の三分の一程度がラゥルウントの国土だった。かつて、鉱山が莫大な金になるとわかると、この鉱山の争奪をめぐって多くの国と戦争が起こり、大戦へと発展した過去があった。誰もがラゥルウントなどの小国はあっという間に制圧されるだろうと予測したが、ラゥルウントの王城が陥落することは無かった。大国と争ってもそうなのだから、いつしかラゥルウントの軍事力は他国にとって脅威になっていった。そこから時世が変わるまでラゥルウントは頑なに鎖国に近い姿勢をとっていたが、先代国王がフリデンを筆頭に他国との国交を受け入れたのだ。  フリデンとラゥルウントの国境の山脈は長く手つかずであった。というのも、採掘にあたり山頂部から垂直の坑道を掘れば、山の麓に排水と、坑内に新鮮な空気を送る坑道を開けなければならない。地形からこの排水と空気のための坑道はラゥルウントの所有地に作るほかなく、長く宝の山を目の前にがそこで手をこまねくしかなかったのだ。だが、フリデンの辺境伯アデルモ・フォン・エアハルドの巧みな外交力で採掘地のラゥルウント側の鉱山地の領主を懐柔するまで漕ぎつけた。やがてラゥルウントの国王が首を縦に振った。
/200ページ

最初のコメントを投稿しよう!

676人が本棚に入れています
本棚に追加