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ヴェルターはペンを取ったが、思い直して置いた。次回リティアに会った際そのことを伝えようと思った。すっかり習慣になったリティアとの面会を取りやめにするのは初めてのことだった。リティアには申し訳ないが、仕方がない。少し、がっかりした顔を見たくもあったのだ。
一度くらいでがっかりすることもないか。成人すれば結婚して毎日のように顔を合わせることになるのだから。ヴェルターは立ち上がり、窓の外を眺める。今や庭の一部となった幼い頃にリティアと二人で植えた樹木が風で揺れていた。
ヴェルターは、オリブリュス公爵家の馬車が時々宮廷に来ているのは知っていた。
以前はヴェルターに会いに来たリティアのものだったが、ここ最近はヴェルターに顔を見せることもなかった。ヴェルターはリティアに自分の執務室にも寄るように伝えたが、リティアは気のない返事をするばかり。
半年くらい前からだろうか。リティアは落ち着きがないように感じた。聞き覚えのない言葉を口にしたり、時々ぼーっとしたり、何よりいつも瞳が何かを探すように彷徨い、誰かを待っているようだった。誰を待っているのだろうか。答えは出ないまま変わらない時を過ごしていた。
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