第4話 王子、苦悩する

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 ヴェルターがリティアを訪問した翌々週の事だった。  執務室に入って来た執事がローテーブルやソファを入念に確かめると、侍女に一つ二つ指示を出して共に部屋から出て行った。来客があるということだろう。事前に約束のない、来るか来ないかわからない来客。ということは今日はこの宮廷にリティアの馬車が来ているということか。ヴェルターは侍従の動きで察してしまうのが心中複雑だった。  ここ最近は来ないのだ。執務室に出入りする士官や侍従から漂う“来たか”“まだか”といった様子見が、遅い時間になるにつれて“来ないのでは”といった憐れみを含んだ気遣いに変わる。これがヴェルターにはいたたまれなかった。  いや、別に約束をしてわけではないのだから、来なくてもよいではないか。何か用事があって来たのだろうし。そうは思ってもヴェルター自身、窓の外に意識を向けてしまう時間も少なくはなかった。……いや、はっきり言えば多かった。何なら立ち上がり、よせばいいのに窓から庭園を見てしまった。  ……春に咲く花のような淡い色の髪。  ヴェルターは自分の婚約者すぐに見つけた。横にいるのは、オリーブ色の髪、はランハートか。リティアにとっても気の置けない友人の一人だ。リティアはランハートに会いに来たのだろうか。いや、そんなはずはない。ランハートは職務中で、と二人が会う理由は偶然であることを想像していると、眩しい黄金の髪、ヴェルターの覗く窓まで賑やかな声が聞こえそうな朗らかな男の姿があった。レオン……。レオンも今は騎士の警備があるのでは。
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