676人が本棚に入れています
本棚に追加
/200ページ
第2話 悪女様こちらの準備は整っておりますよ
――いつの間にか眠っていたらしい。明かりを消すと眠くなるというのは過保護に育てられた長年の習慣からリティアに刷り込まれたものだった。
瞼越しで部屋が明るいのがわかった。……朝だ。
コンコンとドアがノックされ、頃合いをみて侍女ミリーが入ってきた。
「おはようございます、お嬢様。……まぁ、少し目が赤くなっているのではありませんか……夕べは」
ミリーは一瞬で目ざとくリティアの小さな異変を察知する。
「大丈夫よ、いつもと変わりないわ」
リティアはこの後にミリーの小言が続く前に遮った。夕べ考え事をして(いつもよりは)眠るのがお遅くなったなどと言ってしまえば今度からもっと早く寝台に押し込まれるに違いなかった。さっと目を逸らしたというのにミリーはじっくり観察する目を緩めることは無かった。
「まあいいでしょう」
腰に手を当ててミリーはおおよそ納得したようにいつものようにリティアの身支度を始めた。実に無礼な対応にも思うがミリーは完璧にまでにリティアを管理し仕える、リティア以上にリティアをよく知る人物だった。信仰レベルのリティアファーストなミリーにリティアは任せるより他なかった。なぜならそれが一番平和に時間が過ぎるからだ。
もう、過保護なんだから。そうは思うがリティアはミリーの忠実な献身に弱いのだ。
「さぁ、では顔をお洗いになって。本日はヴェルター殿下とお会いになる日ですからね」
「……はい」
最初のコメントを投稿しよう!