(そのころリティアは)

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 母親はきょとんとする。こういう表情をすると二人はよく似ていた。 「でも、あなた。ヴェルター王子に会いに宮廷へ行く時や、令嬢たちのお茶会はどうするの? 」 「それが、お母さま。殿下はしばらくお忙しいみたいで宮廷にいらっしゃらないのですわ」 「まぁ、それで社交の場に出るのも気乗りしないのね? 」  母親の勘違いに、否定しても勘ぐられそうで、リティアは微笑むしかなかった。その不自然な笑顔をを母親は無理をしていると判断し、いたわりをもってリティアを見つめた。 「そうね、リティア。あなたもこれからますます忙しくなるのだから、今のうちに休んでおきなさい。それと、ミリーを連れて行きたいのだけどいいかしら」 「ミリーを? 」 「そう。エルシャが妊娠していることは知ってるわね? 」  エルシャは母付きの侍女だ。 「ええ」 「あまり馬車であちこちに連れて行きたくないのよ。かといって、皇后さまのところへ行くのにハンナではまだ頼りないでしょう。エルシャの穴埋めには3人は必要だと思うのだけど、こちらがぞろぞろと侍女を連れて行くのは不敬でしょうし、ミリーなら皇后さまも知った顔でしょうから。リティアが屋敷から出ないならミリーでなくても不便はないでしょう? 」 「ええ、大丈夫よ」  リティアは思わぬ幸運が手に入った気分だった。お茶会に行かなくて済む正当な理由が出来ただけでなく、ミリーもいなくなるという事は……思い切りダラダラ出来る!リティアのダラダラはせいぜい一人静かに物思いに耽るくらいであるが、貴重な時間であった。緩んでしまう顔をごまかすのに俯くと、母親は心配する素振りを見せた。
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