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◇ ◇ ◇ ◇
シュテンヘルム辺境伯は自ら最前面でヴェルターを迎えた。すっとヴェルターに静かな挨拶をすると、ヴェルターも彼に敬意を示した。沈黙が数秒、領主、シュテンヘルム辺境伯、アデルモ・フォン・エアハルドは次第に顔を歪め、それに気づいたヴェルターが後さずった。
現国王の年の離れた弟君、ヴェルターの叔父である。彼の容姿、王族を象徴した真珠色の髪はヴェルターよりやや黒っぽく輝く。ヴェルターより少し濃く色づいて見える瞳、よく似ている。違うのは上背と服の上からでもわかる鍛え上げられた身体だろうか。向かい合えば、ヴェルターの方が分が悪いのは明らかだった。じり、とヴェルターが踵を後ろに引いた時だった。アデルモはヴェルターが引くより早く前進した。
「ヴェルター!!!! 」
壁面に飾られた豪華な金縁の肖像画が彼の大音量で揺れる。がっちりと太い腕でホールドされてはヴェルターは受け入れるしかなかった。彼の気が済むまで。まるで幼子にるみたいに頬をすり寄せぎゅうぎゅうと抱きしめる様に、初めて見る侍従や護衛騎士は止めるべきか体を揺らし、不安げに周りの者の顔を窺ったが、マルティンが大丈夫だと制止した。
気品ある外見に不似合いな歓迎に、そこにいる者たちは何とも言えない表情で見守った。
「お兄ちゃんだよ、ヴェルター。あぁぁああああ、大きくなった。ん、まだ小さいな? 肉、おい、今日は肉をたんまり出してくれ。ちゃんと食事はとってるのか? 」
ぎゅうっと大きな手でヴェルターの頬を挟み、マルティンが類を見ないほどの容姿だと思ったヴェルターの御尊顔はぺちゃんこになっていた。
「ほひふふぇ」
「ん? なんだいヴェル」
「いふぁいふぇす」
ヴェルターは何とか狭い隙間から抜け出すと、
「叔父上、痛いです」
と自由になった口で今度ははっきりと伝えた。
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