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「はは、ちょっと興奮してしまったな。みんなも長旅ご苦労だったまずは湯あみでもして疲れを癒すと良い。それからは、もてなそう。なぁに、護衛はうちの者に任せるといい」
アデルモはヴェルターと10ほども離れていない青年で、ヴェルターの幼少期は叔父というより兄妹のように育った。王宮にいる時はまだ細かったが、シュテンヘルムへ来てからは見違えるほどにたくましくなった。彼は国王の弟でありヴェルターの叔父であることはそっくりな容姿が無ければ信じがたいほどかけ離れた――豪快な男だった。そして、彼は彼の甥を溺愛していた。成人を翌年に控えた人間に対しての扱いが取れないほどに。
「叔父上、僕はもう子供ではありません」
ヴェルターの抗議にアデルモは目じりを下げた。小さい子が大人ぶったのを微笑ましく見る目だった。
「そうか、そうかぁぁあ」
また押しつぶされては敵わないとヴェルターは機敏に彼の手を避けた。
「叔父上」
「すまん、つい」
可愛いもので、とアデルモは小声で言った。
ヴェルターはアデルモから一通りの、彼方式の歓迎を受けると、メインディッシュばかりの夕食を取り、この日は早々に休むことにした。手入れの行き届いた屋敷にアデルモがヴェルターの訪問を心から楽しみにしていてくれたのがわかる。明日は隣国の女王に会わなければならない。その憂虞を、アデルモの大歓迎が癒してくれた。
自分の事を“お兄ちゃん”と呼んだアデルモを思い出すと、おかしくなって寝具に顔を埋めて笑った。清潔なシーツは太陽の香りがした。この日、ヴェルターは王国を出て初めてぐっすりと眠れたのだった。
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