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――――翌朝
ヴェルターは朝食にしては重すぎる食事を前に、サラダやフルーツに手を付けるとアデルモは片眉を上げた。
「好き嫌いするんじゃない」
彼が切り分けた肉の塊、削いだ方ではなく塊の方を皿に入れられそうになってぎょっとした。
「叔父上、お気持ちだけ」
むっと口を結んだアデルモに、
「私よりマルティンの方が細い」
とヴェルターが呟くと、マルティンはサッと顔色を青くして侍女に自分の皿とナイフを急いで下げさせた。
「私は、食事が終わったところでございます」
マルティンはさも残念そうに眉を下げた。アデルモは料理が多く残っていることに不満そうだったが、固まり肉を誰かに押し付けるのは諦めた。
「ああ、ヴェルター、午後からラゥルウント国王がわが領土へと訪問される。が、少人数での非公式なものだ。お前も肩の力を抜いて対応してくれたらいい」
驚くほどあっさりと予定を告げられ、ヴェルターは目をパチパチした。
「叔父上、そういうわけには……」
「いや、いいんだ。兄上が来ると仰々しくていかん。真面目で、融通がきかなくて、あ。これは褒めてるからな。だからお前に来てもらったんだ。若い王だ。君も学ぶことが多いだろう。だから私も、今日は気兼ねなくヴェルター、君を甥として扱う」
お兄ちゃんとして対応する、とにやけて小さく溢したのをヴェルター、及び広間の全員が聞き逃さなかったが聞き逃した振りをした。もっとも、ここへ来て王太子として扱われたのはほんの数秒で、それは構わないのだが、とヴェルターは眉間に皺を寄せ、きゅっと口を結んだ。
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