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ヴェルターはこれを聞いて実際にアン=ソフィ・ラゥルウントに会ったことがあるアデルモはどう思うかと心配になったが、アデルモは笑ったりはしなかった。代わりに(貫録を出すためにわざと伸ばしているのだろうがあまり生えていない)あごひげを撫でるとふんと頷く。
「まんざら、事実とかけ離れているわけでもなさそうだな」
アデルモの言葉にヴェルターは静止した。そうなのか、と血の気が引く。
「まぁ、慌てるな。ここで説明するより会った方が早い。さて、時間までここの宮殿を案内しよう」
山の上に建つシュテンヘルム城はかつての戦争後は廃墟となっていた城砦をアデルモの統制時に増改築して宮殿へと変えた城である。アデルモはこの新旧入り混じった宮殿を大層気に入ってる様子だった。
広間には前国王と王妃の肖像画だけでなく、ヴェルターの父である現国王、王妃、ヴェルターの肖像画までが飾られ、忠誠と溺愛が見て取れた。ヴェルターの肖像画は成長に合わせて、
「一、二、三、四……全部で一八枚ですね」
ご丁寧にマルティンが数えてくれた。
「いや、特に気に入ったものは私の執務室、寝室にもあるから、これの倍はあるだろう」
アデルモは王族に仕える者たちはみんな無口だと感心していたが、全員が絶句していただけだった。ヴェルターは自分の姿を客観視させられ奇妙な気分だった。
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