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「ここからは一番新しく作った箇所であるのだが」
アデルモはくるり振り返り手で、待つように指示した。
「これから使う予定である。希望をもって建築させた。で、あるから……」
アデルモはもったいぶって一度言葉を切った。全員が沈黙してアデルモの言葉を待つ。アデルモの王族独特の綺麗な目が泳いだ。
「同情は禁物だ」
そう言うと大きな体を翻しずんずんと進んでいた。
謁見の間、寝室、第二寝室、図書室、ゲストルーム、同情すべきものが見当たらず、ヴェルターは不思議に思った。
「叔父上、わざわざ付け足された理由がわからないのですが」
確かに華美で明るい造りではあるが、部屋の用途は以前からあるもの変わりがなかった。アデルモが咳払いし、開けた部屋。
「ここは、夫婦専用の祈祷室」
「え? 」
ヴェルターがアデルモを見上げると光をたっぷりと取り入れられるよう設計された室内ではアデルモの白い肌が耳まで赤く染まるのが見えた。
「私一人で使っている。今は、まだ」
あ、とヴェルターは悟った。が、この際自分は無邪気な甥に戻って聞くことにした。
「叔父上、もしかして先ほどの寝室も」
「う、あ、夫婦専用の寝室だ」
「ええ。で? 」
「私一人で使っている。今は。今は、だ! 」
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