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「時にマルティン」
マルティンはヴェルターとアデルモの似ている個所と似ていない個所を見つけて楽しんでいたので、急に話を振られて体を浮かせた。
「は! なんでしょうか」
「俺の何が駄目なんだろうか」
王国一二の頭脳でもアデルモの欠点は見つけられなかった。マルティンはおっべっかを使うことに慣れていなかった。なぜならマルティンもおべっかを受ける側だったからだ。史書の解析なら得意なのに。マルティンはヴェルターがに言った言葉を思い出した。殿下には一目ぼれ、ではその叔父はヴェルターにさらに色気を足したようなお方。
「私がレディなら、例え一晩でもお願いしたいくらい魅力的でございます」
マルティンはおべっかにとことん慣れていなかった。護衛の騎士たちがサッとマルティンから距離をとったように感じた。
「レディなら! って言ったでしょうが! では、あなたたちはこの方を見て令嬢たちが正気を保てるとでも!? 」
「……いえ。お相手願いたいほどです」
「私もそう思います」
騎士たちは忠実だった。
「うむ。君たちは、えー、後で剣のお相手を申し受けよう」
アデルモは気を良くしたようだった。が、マルティンは変な噂が立たぬよう
「例え、さっきのは例えですからね」
と、廊下を歩く間言い続けた。
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