(紅の女王)

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(紅の女王)

 宮殿の案内が終わるとアデルモは、 「このシュテンヘルムはなかなかに美人が多い。君たちも今日が終わるとゆっくりしていくといい。羽目も多少は外さないとな」  と若い青年たちに声を掛けた。 「叔父上、……まったく。女性に慣れてらっしゃらないのかと心配しましたのに」 「わはは、素晴らしい女性ばかりで選べんのだ」  夫婦の寝室は妻しか入れないが、といったとこか。ヴェルターは安心したように呆れたようにため息をはいた。 「まったく」 「ヴェルター、お前の方が結婚は早いかもしれないな」  そう言われて、ヴェルターはうかつにも体を強張らせてしまった。一瞬の出来事だったが勘のいいアデルモには気づかれてしまった。 「何だ。リティア嬢とうまくいってないのか? 」 「そんなわけないじゃないですか」  ヴェルターは半ば自分に言い聞かせるように言った。 「……そうか。お前たちは幼馴染だからな、男女の意識がなかなか変わらないのかもしれないな」 「いえ、そういうわけでは」 「ん、じゃあ、体の相性か? 」 「叔父上! 結婚もしていないのにそんなわけないでしょう! 」 「は、ううむ。まだなのか? 」  ヴェルターはカッと顔を赤くした。 「婚約者は結婚するまで関係は持てないのか? いや、でもお前たちは恋人でもあるんじゃないのか? 」  マルティンはまた話を振られては困ると聞いてない振りをした。もっとも、聞いていいのかわからない話ではある。 「とにかく、私とリティアはまだ、ごほん、慎重に、結婚してからで構いません」 「そうか。まぁ、もう一年てところだもんな。元気か、リティア嬢は」 「……ええ、元気ですよ」  元気か聞かれただけだ、元気と応えればよいものを。ヴェルターは自分の未熟さを疎む。返答に一拍置いてしまった。
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