第2話 悪女様こちらの準備は整っておりますよ

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 王太子来訪の知らせを受け、侍女に続いて貴賓室へと向かう。待たせたところで嫌な顔などされるわけもないが、旧友のような婚約者は時間を持て余したのか窓の側に立ち庭園を見ていた。広い窓から差し込む光が、銀糸単色の刺繍を施した白のロングコート、ウエストコート、それから彼の真珠の髪が艶やかに跳ね返していた。……眩し、い。盛装ではない訪問着だが麗しい装いにリティアは目を細めた。  リティアに気が付いたヴェルターは、リティアが形式ばった挨拶をするより先に声を掛けた。昔からの愛称で呼ばれれば、自分にもそうして欲しいという合図であり、王太子にとっても気さくな時間であった。  「やぁ、()()()。……そのドレス、とっても、よく似合ってる」  春らしいアイルトーンブルーを基調に白いレースがたっぷり使われたドレスはリティアの愛らしさを強調していた。リティアが微笑むと、ヴェルターの秋の空にさらに薄雲をかけたようなアイシーブルーの瞳が揺れ、長い睫毛が二、三打ち合わされた。微笑みあうだけの時間が過ぎる中、ミリーがそつなくティータイムを仕切っていた。やがて二人を残しミリーが部屋を出て行くまで二人は口角を下ろさなかった。  リティアはヴェルターが顔には出さずに安堵していることに気が付いた。カップにお茶が注がれていれば、カップを口へ運ぶ間は会話を探さなくて済むのだから。
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