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アンは優雅にカップからお茶を一口啜った。
「私どもは、ラゥルウントとフリデン王国のシュテンヘルム、この国堺にある鉱山を手放していいと思っています」
「手放す、とは」
「フリデンに譲るという事です」
ヴェルターは、そんなうまい話があるはずがないと思った。ヴェルターに限らずそう思うのが普通だ。
「それで、そちらの条件は? 」
「ふふ、ええ。今まで通り街の通行料は頂くとして、新たな鉱山発掘の技術力を貸していただけませんか」
「それだけですか? それなら他国が黙っていないでしょう」
「ええ、そうでしょうね。今他国から攻め込まれても我が国に対応できる軍事力はありませんから。そこでごく平和的に国境の鉱山を御国に受け渡す方法があります」
それが、自分にしかできないことなのだろうかとヴェルターは考え巡らせた。
「我が国と契約を結んで頂きたい」
「ええ、それはもちろん。契約なしでは進められませんから」
「婚姻です。婚姻契約。そして、国境の鉱山は持参金ということに致しましょう」
アンの提案は、単純に契約としては素晴らしい方法だった。
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