(帰宮)

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「何だ? 」 「……先ほど、リティア嬢の馬車をお見かけしたので、ひょっとするとこちらに会いに来られたのでは、と思いまして。お調べ致しましょうか? 」 「ああ、いや、いい。ラゥルウントの王女からリティア宛てに贈り物を言付かっている。私が持って行くべきだろう」  ヴェルターはもっともらしい理由を言った。 「そうですか。では、そのようにオリブリュス公爵家の侍従に手紙を言づけましょう」 「そうしてくれ」  エアンが部屋から出て行くと、ヴェルターはそこにいる侍女に尋ねた。 「私が留守の間、リティア嬢はこの宮殿に来ていたか? 」 「はい、おそらく。オリブリュス公爵令嬢の馬車は何度か見かけました」 「リティアは? 」 「いえ、私どもは令嬢の姿までは……あ、しかし令嬢お付きの侍女は見かけました」  リティアの侍女、といったらミリーか。ミリーがリティアを置いてここへ来るはずはない。ということはリティアはここへ来ていたのだろう。ヴェルターは何とも言えない気持ちになった。 「何度だ? 何度見かけた? 」  侍女は不思議そうな顔をしながら指を折り 「三度です」  そう答えた。  一人になったヴェルターは深い溜息を吐いた。リティアがこの宮殿に来ている。ヴェルターの帰宮は予定より二日も早まったのだ。リティアはそのことを知らずに来ているはずだった。 「私に会いに来たのではない。私がいないことを知っていて三度も。……誰に会いに来たというのだろう」  以前のように立ち上がり窓の外を覗く。だが、そこにリティアの姿は無かった。それに、ほっとして、反対に見えないことにがっかりもした。ドアがノックされ再びエアンが入って来る時にはヴェルターは複雑な気持ちは胸の奥にしまい、平静を装った。
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