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「まぁ、なんて綺麗なの。真珠のような艶。でも真っ白ではないし、光の加減で少し黒味を帯びているような……。ヴェル、この色、なんて表現したらいいかしら」
ヴェルターを見上げたリティアは、はっとした。ヴェルターも気づいたらしく、微笑んだままの表情ははにかんだ笑みに変わった。
「さぁ、なんて言ったらいいんだろうね。えーっと、“白飛びしそうな色”」
「ヴェルったら! 」
「ははは」
ドレスは、ヴェルターの横に並ぶことが想定された色だった。ヴェルターの髪と同じ色だ。リティアはヴェルターがまだ根に持っていることを知り必死で弁解する。
「太陽は眩しくて直接見られないでしょう? あなたはこの国の若き太陽だから! 」
「うん」
優しく微笑むヴェルターにリティアはますますばつが悪くなって俯いた。頬が赤くなる。見慣れた笑顔が知らない人みたいで、リティアの胸が小さく痛んだ。彼が即位したら、もうこうやって気安く話すこともないのだろうか。彼の隣にこの色のドレスを着て並んでいいのだろうか。
「今度、このドレスを着て会いにいこうかしら」
ヴェルターは一瞬鉄壁の微笑みを保てていなかった。どうしてこんなことを言ってしまったのだろうか。リティアがそう後悔するくらい沈黙が続いた。
「申し訳ない、リティ。しばらく忙しいんだ。だから、そのドレスは次回僕がこちらへ伺った時に見せてくれないか? 」
いつもの柔らかな微笑みで言われると、リティアも
「ええ、そうするわね」
と言うしかなかった。羞恥で顔が熱くなるのを感じた。ヴェルターがこのドレスを着た自分を早く見たいだろうと思っているかのような言い方をしてしまった。俯いたリティアにヴェルターが顔を寄せる。
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