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「楽しみにしているから、それまでは着ないでね」
リティアは気を遣われたのだと思うとどうしようもない気持ちになったが、不意に近づいたヴェルターに更に顔を赤くした。なかなか離れようとしないヴェルターに、リティアは体を固くして息をするのを忘れた。すっ、とヴェルターの手がリティアの耳朶に触れ、リティアは身をすくめた。ひやりと人肌ではない冷たさに俯いた顔をあげた。
「ヴェル……? 」
「うん。僕からのプレゼント。ラゥルウントは希少性の高い天然鉱物も多く産出しているから。きっと、君に似合うと思ったんだ」
ヴェルターは自分の選んだ宝石の耳飾りをリティアに着けると、やっぱり、良く似合う。と満足げに笑った。それから、リティアの束ねた髪の先を持つとそこに器用にリボンを結んだ。
「ラゥルウントは今、織物産業にも力を入れていてね。このドレスもそうだけど、染色技術が素晴らしいんだ。ほら、君の白い肌にとっても映える。……綺麗だ」
リティアはすっと視線を落とし、リボンを確認した。鮮やかな深紅が艶やかに瞳に映った。触れるとしっとりとした生地は、きっと高価なものなのだろう。
「……綺麗」
「うん。実は僕のクラヴァットも同じ布で仕立ててもらうことにしたんだ」
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