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綺麗だった。ヴェルターが持ってくれた鏡にはリボンと同じく、少し黒みがかった紅く濃い色のガーネットの耳飾りが揺れていた。あまりの美しさにリティアは息を吞んだ。
「そう……。珍しいわね、ヴェル。あなたがこの色を選ぶのは珍しいわね。え、っと、どうしてこの色を選んでくれたの? 」
リティアが尋ねるとヴェルター直ぐには返事をしなかった。
「どうして、どうしてだろう。ただ、この色が妙に綺麗に見えたんだ。気に入らない? 」
「まさか! ありがとう。とっても素敵だわ」
事実、リティアはとても綺麗だと思った。だが、どうしてかわからないという事は無意識だろうか。この色が妙に綺麗に見えたのはなぜか、ヴェルターは自覚に至っていないのだろうか。
マルティン補佐官は言った。“深紅の髪と、深い紫の瞳。目を見張るほど美しい方でした”目を見張るほど、美しいアン女王はこんな髪色をしていたのだろうか。リティアは紅い宝石を通してアン女王の髪を想った。
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