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「手荒れにオイルを塗ると良くなるのですか? 」
リティアは、改まって言った割にウォルフリックの質問がごく普通で返答が一瞬遅れた。
「は、ええ。乾燥した際には保湿出来ますし、手荒れ予防にもなります。お好きな香りのついた物は癒しにもなりますわ」
「香り……そうですか」
手荒れで悩んでいたのかとウォルフリックの手をチラリと盗み見た。剣を持つだけあってごつごつした手だった。
「私も時々荒れはするんですが、剣を持つのにオイルは滑りそうですね」
ウォルフリックはにこり笑った。彼に恋心を抱いていないリティアさえ惑わされてしまいそうなウォルフリックの笑顔に、リティアは自分がしばらく見とれていたことに気が付かなかった。
「……リティア嬢? どうされましたか」
「あ、いえ。その、話しやすい方ですし、異性の友人がいらっしゃらないのも不思議で。アカデミーには通ってらっしゃらなかったからでしょうか」
確か、アカデミーにウォルフリックは通っていなかった。もし通っていたら彼の容姿では令嬢たちが黙っているはずもなく、リティアも気づかないわけがなかった。
「ええ、子供の頃は母方の祖父母のところで過ごしていたものですから」
「……そうなのですね」
夫人の実家ということは異国なのだろうか。なぜ父のいる王都ではなく、夫人の実家で過ごしたのだろう。リティアは疑問に思ったがそれを詮索しない教養はあったし。気安く聞ける間柄では無かった。ふ、とウォルフリックが吹き出したのに気づいて、リティアは顔を上げた。
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