第6話 真のヒロイン、悪女とは……。

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 リティアは目をキラキラさせてこくこくと頷いた。 「勘弁してください、令嬢。私も言ってから気づいたのです。“私は今、彼女に片思いをいているのだ”と」  ウォルフリックの恥ずかしくも幸せそうな表情に、リティアは胸がぎゅっとなるのを感じた。  シュベリー卿は恋をしているんだわ。ああ、なんて素敵なのかしら。この憎らしいほど美しいシュベリー卿でも戸惑うのが恋なのね。目の前の美しくも騎士らしい強靭な大人の男性が可愛らしく見え、リティアは胸がどきどき高鳴った。全力で応援したい気持ちだった。 「シュベリー卿、よろしければ、いくつかオイルをお持ちしましょうか? お気に召せば購入した店も紹介いたします」  リティアがそう言うと羞恥から憔悴していたウォルフリックはパッと顔をあげ、嬉しそうに微笑んだ。 「よろしいのですか、令嬢」 「ええ。もちろん。私たちはもう友人ですから、シュベリー卿」 「ありがとうございます。では、私の事も、気安く呼んで下さい」 「はい。ウォルフリック様」 「では、リティア様。お時間ありがとうございました」  後日、オイルを渡す約束をするとウォルフリックは普段の彼からは想像できないくらい機嫌よく去って行った。リティアはまだ胸がどきどきしていた。 「人の恋でもこんなにどきどきするのね。ああ、気になって仕方がないわ。彼の気持ちが伝わるように私も協力しなくっちゃ」  リティアは帰ったら侍女に手入れ用のオイルを全て持ってくるように言わなくては、と思いながら母の元へと戻った。母の業務が終わると、ほぼ強制的にヴェルターのところへ顔を出すように言われ、リティアはそちらへと重い足で向かった。
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