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褒めたことで媚びているように思われただろうか。ヴェルターの表情は変わらず柔らかで、リティアはそれ以上読み取ることは出来なかった。
「ヴェルはほら、とても綺麗でしょ。白のコートも、中のウエストコートもヴェルの髪色も瞳も白で統一されてるみたいに見えて、眩しくて幻想的だった」
「ああ、眩しくて目を細めてたの。確かに、目には優しくないかもね」
褒めたつもりだったが、ヴェルターの声が少し低くなったことで貶したと取られたのだろうか。リティアは次第に焦慮しすぎて饒舌になった。
「後ろから光がさしてるみたいに見えるって事よ! 高貴なあなたにはぴったりだわ」
「そう、かな」
「ええ、ええ。眩し過ぎて白飛びしちゃってるように見えるくらい。ふふ」
「白飛び? どういう意味かな」
リティアはハッとして口を覆った。自分の言った言葉は初めて口にした言葉で、ここにはない表現だった。口にするほどだ、リティアは理解できたが、ヴェルターはそうではない。こんな時に咄嗟にここでは使われないの言葉が出て来るなんて。誤魔化すためにリティアはますます焦り、ヴェルターの訝し気な表情はそれに拍車をかけた。
「えっと、後ろから日が差してたら眩しくて見れないでしょう? 一瞬消えたように見えるの。あなたの場合は光を跳ね返すから。いえ、むしろあなたが光ってるように見えるの」
ヴェルターは更に眉を寄せてしまう。とてもじゃないが褒めているようには受け取って貰えていないようだった。リティアははさらに取り繕うことに力を注いだ。だが、こういう心理状態の時は言葉を続ければ続けるほど、事態は悪くなる。
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