第7話 疑似恋愛

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「ふうん。教えてくれたら最近令嬢の間で流行ってる物なんかを教えてあげられるわよ? 」  あの手この手でリティアはウォルフリックを誘惑したが、なかなか口を割らないウォルフリックにしびれを切らしていた。 「リティア、君は第一印象と随分違うんだね」 「あなただって。もう! もっと男らしい人だと思っていたわ、こんなにうじうじするなんて」  ウォルフリックの手の中にはこの日も令嬢に渡しそびれたらしい箱に入ったオイルがあった。 「違うんだ、リティ。年ごろの令嬢に婚約者がいないはずはないって、気が付いてしまったんだ」 「ええー、今更ね。あなた、そんなことも知らずに好きになったの? いえ、好きになった時にそれなりに調べるものでしょ」 「ああ、そうだよね。正直、知るのが怖いんだ。だけどわからないままこれを渡すことで彼女に迷惑がかかってはいけない」 「もう、彼女のことになると途端に臆病なのね」  リティアも人の事には強気だった。ふむ、とウォルフリックを俯瞰する。 やっぱりものすごく素敵だ、と判断した。彼の前では令嬢たちがポエマーになるのも納得の容姿、気品。それに、身分や能力を判断しても令嬢たち、いや、その親から羨望される完璧な有望者である。 「ウォル、あなただって結婚の申し出は多数あるでしょう」 「彼女の家からは無かった」 「ってことは、あなたの家に引けを取らない身分の令嬢てことね!? 」  ヒントを得てリティアはあれこれと当てて見せた。
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