678人が本棚に入れています
本棚に追加
/200ページ
「宮廷で見かける令嬢、そしてあなたの勤務先に関わりがある、」
おのずと絞られてくるではないか。ぱっと顔を上げるとウォルフリックは観念するように白状した。
「スタイニッツ伯爵令嬢だよ」
「べルティーナ嬢! 」
ウォルフリックは、恥ずかしくて顔が上げられないといった様子でリティアから顔を背けた。
「彼女とはどうやって知り合いになったの? 」
リティアはべルティーナとは面識があった。ウォルフリックの想い人として意外と言うほどでもないが、彼女はそう愛想のいいタイプでもなかった。
「ちょうど、彼女と庭園を通るタイミングが同じ時期があって、あまりに会うものだから顔見知りになった。初めは会釈程度だったのが、一言二言と話すようになって。なんていうか、彼女は私に気負うことなく話してくれるんだ」
「なるほど」
べルティーナは彼の前でポエマーにならなかった数少ない令嬢の一人、ということか。年齢の割に妙に落ち着きのある彼女は、ウォルフリックにとっては普通に話せる女性ということか。彼女の家門の事を考えると、彼女が例え相手がウォルフリックであろうが平常心を保ってられることがすっと腑に落ちた。そうか、彼女か……。目を引く派手さはないが、それもわざと計算されたものであることをリティアは知っていた。聡明で堅実な人なのだ。
最初のコメントを投稿しよう!