第7話 疑似恋愛

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 スタイニッツ伯爵の系統は優秀な人物を数多く輩出している。べルティーナは兄が二人いてどちらも文武両道で、令嬢たちの人気も高かった。二人ともとてもハンサムなのだ。兄二人はそれを良い事に多くの浮名を流し、それもうまく遊ぶもので、彼らを悪くいる者はいなかったが、それゆえべルティーナはハンサムな男性に免疫があり、かつ遊び尽くす兄のお陰で、男性に理想を押し付けることはなかった。 「いくらイケメンに免疫があるったって、ウォルは別格だから、落とせないわけはないわね」  リティアはとがった顎を指で撫でながらそう分析した。彼女に婚約者、はいないと思うが……。まだ公になっていないだけの可能性もある。 「ああ、リティ。君は手荒れが治ったのかい? やはりオイルを塗るとすぐに治るのか。それなら、直ぐにでも渡すべきだな。そうだ、このくらいのプレゼント、婚約者がいたって負担にならないだろう」 「ええ、そうね。自分が使っているものだ。とかなんとか適当に言って渡せばいいじゃない」  気軽に、という意味だったが、ウォルフリックは真剣なまなざしで眉を寄せた。確かに、イケメンの悩ましい姿は恐ろしくも見えるのかもしれないとリティアはその横顔を見て思ったのだった。
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