私、人妻なんですが…〘Ⅲ〙

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「私でよろしいのですか?」 「ええ、あなたがいいの。あなた、娘さんがいたわよね。」 「はい。今年、大学生になりました。」 「娘さんの恋愛については、どう考えているの?」 「えっ、娘の恋愛ですか…そうですね、娘が幸せなら、どんな恋でも構いませんよ。まあ、世に言う不倫とか、後ろ指指されるようなものじゃなければですが。」 「自由な恋愛を認めてらっしゃるのね。」 「自由じゃない恋愛ってあるのですか?」 「えっ?」 「相手を好きになることも、恋人同士になることも、その先の結婚もみんな、本人同士が自由に選べることです。だから、私は、恋愛は自由だと申し上げました。」 「ねえ、娘に私達が選んだ相手と、結婚を前提のお付き合いをするように言うこと、どう思って?」 「別によろしいのではないですか。お見合いや紹介が悪いことではありませんもの。 今どきは、マッチングアプリですか、それで選ばれた方とメールや電話なんかでお話したり、実際にデートしたりして、相性良ければ結婚というのも普通になりましたから。それって、結局、お見合いの仲介人が、親戚や知人から、アプリの会社に置き換わっただけですわ。 私は、お嬢様にお似合いの素敵な方を紹介していただいたのなら、お見合いをするように勧めても変ではないと思います。」 「…そうよね、私達は、二階堂の家を繋いでいくためにも、期待の出来る殿方をあの子に引き合わせたいの。そのために、色々骨を折ってるのよ。でも、ずっと拒否されてるの…。」 「お嬢様が拒否されるのには、それなりに理由があるのでは、ありませんか。」 「…理由。」 「奥様。親の思いと子供の思いが、同じとは限りませんし、恋愛の基準も違います。お互いの意見がぶつかるのは当たり前ですわ。お嬢様だって、ご両親と揉めたいと思ってる訳ではないと思います。時間が掛かっても、きちんとお話し合いされることがよろしいのではないでしょうか。」 芙美は、寿成の言い分にばかり寄り添って、珠香の言い分や気持ちには、全然、寄り添ってこなかったと気付く。何度も、珠香は、芙美に気持ちをぶつけてくれていたのに…。 「ありがとう和美さん。少し気持ちの整理が出来たわ。」 芙美の顔に、笑顔が戻ってきていた。
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