コスモスの微笑み

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 彼は九月に網走マラソンを完走した。完走の喜びを作品にしたためるはずだった。ところがインフルエンザに感染してしまい、五日間の自宅待機を余儀(よぎ)なくされた。  書かずじまいで気が付くと、もうクリスマス。年が明けてしまう。その前にしたためておこう。  網走マラソンのスタート地点は何と網走刑務所である。彼は四月に佐渡ときマラソン、六月に隠岐の島ウルトラマラソンと、かつての流刑地(るけいち)巡りをしたが、とうとう現実の刑務所前に来ることになった。  当大会の完走メダルは受刑者の手作りである。スタート前に感謝の言葉を塀の中に聞こえるようにランナー一同、声を合わせた。  コース途中の第一関門である能取岬(のとろみさき)から見るオホーツク海が絶景で、デジカメで動画撮影。  残り二か所の関門も無事クリアしてゴールを目指した。  ゴールは大曲湖畔園地。咲き誇る向日葵(ひまわり)畑を一周するはずだった。ところが今年は記録的な猛暑で、満開を過ぎた向日葵がお辞儀をしていた。  ともあれゴールインして完走メダルを手にした。  完走メダルをぶら下げて散策していると、一面の秋桜(コスモス)が揺らぎながら微笑んでいる。またしても動画撮影。  昨年マラソン後に訪れた礼文島(れぶんとう)といい 北海道には花が良く似合う
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