【10】これぞ青春よね。

1/1
前へ
/16ページ
次へ

【10】これぞ青春よね。

最後に残された謎……それはもちろん……。 「あぁ、俺が海守(みかみ)にいた理由?一応(ぼん)が最近目をかけてる子だからね。統木(すめらぎ)の手の者として、探るのは当然。つてもいろいろ持ってるからね。期間限定のシークレットサービスってことで海守(みかみ)の当主に雇われたって設定で雇われてたところ。まぁ海守(みかみ)にとっても、お嬢さまを守れたから良かったんじゃないかな……?むぁこれで俺の任務は終了だから、また統木(すめらぎ)に戻るよ」 じゃぁもう潜入は終了と言うことで……戻ってくるのね。氷華(ひょうか)ちゃんの……家にも。でも無事に瑠夏(るか)さまが(ぼん)さんとゴールインしたら再会しちゃうけど。 「待たせた」 そうこう話していれば、すっかりひとの捌けた階段下のホールに、朝来(あさき)くんが帰ってきたのだ。 「その、アゲハは……妹は迎えの車で帰した……」 陽咲(ひさ)ちゃんは自分を狙っていた黒幕の正体に驚いただろうに……。朝来(あさき)くんの言葉に、複雑そうに頷いた。 まさか犯人がアゲハさんだったなんて。そりゃぁ学校内でも仲はいいって評判だったけど……まさか、ブラコン……? 「それと……瑠夏(るか)」 続いて朝来(あさき)くんが、(ぼん)さんと並んで立っている瑠夏(るか)さまに向かい合う。 「今まで、誤解して犯人扱いして……すまなかった」 まっすぐに頭を下げる朝来(あさき)くん。あぁぁぁあぁっ!!そう、そうなのよ……!熱血系向こう見ずな朝来(あさき)くんだけど、こう言う時にはきっちり謝れる……!でもそうじゃなきゃ……陽咲(ひさ)ちゃんを嫁にはやれないわ!! そして瑠夏(るか)さまの答えは……っ。 「謝罪は受け入れます」 ああぁ~~っ。瑠夏(るか)さまだってつらかっただろうに!!それでも凛々しくそう告げるさまが尊すぎる……! 「誤解は誰にでもあることですから」 「瑠夏(るか)……」 「その、私からも……陽咲(ひさ)さんに話さないといけないことがあります」 「私に……ですか?」 びっくりする陽咲(ひさ)ちゃん。そりゃぁ……ずっと見つめ続けていても瑠夏(るか)さまと視線が合ったらビクンとしちゃうものね……!もちろんいい意味よ……! 「あと……あなたにも聞いて欲しいのです」 瑠夏(るか)さまはそう言うと朝来(あさき)くんを見やる。 「ぼくにも……?」 「えぇ……もともと……陽咲(ひさ)さんだけに話そうと思ったのですけれど……今のあなたになら、一緒に聞いて欲しいと思いました。茶室を用意してますから……」 そう言えば瑠夏(るか)さまは陽咲(ひさ)ちゃんを呼んだって……。何か重要な話があったってことなの? 「……分かった……ありがとう。瑠夏(るか)」 「……いえ。それから……冬氷(ふゆひ)さんや霜華(そうか)たちも……あなたたちもよければいらして。璃音(りおん)さんのおうちの方なのでしょう?」 「……えと……うん。……まぁ」 (ぼん)さんが頷く。この短い時間で、何かすごく把握してない!?むぁ確かに霜華(そうか)さんはこちらに来ていたけど……。まるで霜華(そうか)さんがこちら側だって最初から分かっていたようだ。 そして……、訪れたのは椅子席の茶室である。一同席につくが、椿鬼(つばき)霜華(そうか)さん、多津真(たづま)さんたちは壁際に控えている。私も壁際~~と思ったのだが、椅子が用意されていたので……素直に座りましたとも……。ご厚意は受け入れなくては。うん。 「それで……お話と言うのは、陽咲(ひさ)さんのことです」 「私のこと……ですか?」 「……えぇ……わたくしも先日お父さまから知らされました。陽咲(ひさ)さんはお父さまが亡くなられて現在お母さまと2人暮らしと聞きました」 「はい……そうです」 そうなのよ……そうなの……!家計だってそんな裕福ではないのに、陽咲(ひさ)ちゃんは勉強を頑張って、授業料全額免除と言う特待生枠を勝ち取ったのよ……! あぁ……頑張り屋さんな上に天使なヒロインちゃん……っ!陽咲(ひさ)ちゃんがかわいすぎるわぁ~~っ! 「お父さまの生家については、何かご存知?」 「え……と、それは……母からは絶縁しているとしか……。うちは両親ともに実家や親戚とは絶縁しているんです。詳しい理由までは分かりません」 「……その件ですが……陽咲(ひさ)さんのお父さまは……元々は海守(みかみ)の長男……わたくしのお父さまの兄なのです」 「え……っ」 ふぇ……?てことは瑠夏(るか)さまと陽咲(ひさ)ちゃんって……従姉妹じゃない……! 「ですが……家同士が決めた縁談を破談にして駆け落ちしてしまったので、海守(みかみ)家から勘当された状況になっておりました。ただ……お父さまはそれでも祖父母から当主としての座を受け継いでから……陽咲(ひさ)さんのお父さまを探されていたんです。しかし……既に陽咲(ひさ)さんのお父さまは他界し、陽咲(ひさ)さんはお母さまと生活されていました。ですがそれならばとお父さまが支援を名乗り出たそうなのです」 「そんな話は……っ」 「きっとお母さまも隠されたかったのでしょう。それを聞き付けた……陽咲(ひさ)さまのお母さまのご両親が……海守(みかみ)家にお金を要求したそうです」 「そんな……っ。そう言えば……小さな頃はおじいちゃんとおばあちゃんに会っていたけど……引っ越してからはもう会わなくなって……絶縁状態が続いていたんです……」 「えぇ……恐らく、親戚縁者からの金の無心を断るためでしょう。それで長らく陽咲(ひさ)さんのお母さまは、陽咲(ひさ)さんと2人で暮らしていたのかと」 「そう……だったのですね……」 さすがの陽咲(ひさ)ちゃんもショックを隠せないみたい……。 「お父さまは、陽咲(ひさ)さんのお父さまの勘当を解いてもいいと仰っています。それから……陽咲(ひさ)さんが朝来(あさき)さんと本気で……お付き合いをされるのなら……」 「それは……っ」 「その……っ」 初々しくたどたどしくなるこのカップルが尊いいぃぃっ! 「きっとこれからも……アゲハさんのように危害を加えてくる手はいくらでもあるでしょう」 「それは……っ」 朝来(あさき)くんが苦渋の表情を浮かべる。 「だからこそ勘当を解き、海守(みかみ)の中に入れば、少なくとも海守(みかみ)のシークレットサービスが動きます。海守(みかみ)陽咲(ひさ)さんとお母さまを海守(みかみ)家の一員として迎えることで、守る手も増えましょう。花見咲(はなみざき)にとっても悪い話ではありません」 「そんな……その、それはそうだが」 朝来(あさき)くんが不安そうに陽咲(ひさ)さんを見る。 「陽咲(ひさ)さん、よければこの後、陽咲(ひさ)さんのお宅へ伺ってもよろしいかしら。よければお母さまとも話がしたいのです」 「それなら……夕方にならお母さんぎ帰りますから……」 「では、決まりですね」 瑠夏(るか)さまが微笑まれる。 「なら、ぼくも……」 と、朝来(あさき)くんが手をあげるが。 「朝来(あさき)さんは、アゲハさんの元についていてあげてくださいませ。どうして今回のようなことをしたのか……しっかりと話を聞いてあげて欲しいです」 「……そうか……そうだな……分かった。陽咲(ひさ)のことは……任せる」 こうして、放課後瑠夏(るか)さまは陽咲(ひさ)ちゃんの家へ訪問することになったのだけど。 「それから、御星(みぼし)冬氷(ふゆひ)さんでしたね」 「ひゃ……、ひゃいっ!?」 ま、まさかの瑠夏(るか)さまからの直接指名……!?あぁ……でも怒られるかしら……隠れて撮ってたことぉ――――……。 「冬氷(ふゆひ)さんのお陰で、こうして無事に伝えたいことを伝えられたと思っています」 「そんな……私は単に……」 推し活していただけなのだが。 「もしかしたら璃音(りおん)さんがとは思ったのですけれど……」 え?(ぼん)さん……? 一方で(ぼん)さんは椿鬼(つばき)をねめつけた!!いや、あながち間違いではない……のか? 「真白さんから、あなたがわたくしのファンだと聞いていて……」 え、真白さまから……!? 「そしてわたくしのことも、犯人ではないと無実を信じて、証明すると言ってくださったのは、とても嬉しかったのです」 はぅぁぁぁっ!私今、推しに感謝されてるぅっ!!尊死ぃぃっ!! 「だから……今度からは影からこっそりではなく、一緒にお話がしたいわ」 「……っ、それは……っ」 「今度冬氷(ふゆひ)さんをお茶に誘ってもいいかしら?」 「よ……喜んで……!」 ひゃーっ!推しティータイムに誘われちゃったんだけど~~っ!? 「あ、でもそれでしたらヒョウカちゃんも……」 「えぇ、冬氷(ふゆひ)さんのお友だちなのでしょう?是非いらして?」 「あ……ありがたき幸せぇっ!!」 ヒョウカちゃんったら……でも分かるなぁ……。何たって推しとのティータイムだもの。 だが次の瞬間。 「じゃぁその時はお嬢の執事バイトするわ~~」 との霜華(そうか)さんの言葉に、ヒョウカちゃんが「ぴえぇ――――――っ!?」と震え上がった。 「いけませんよ、霜華(そうか)。わたくしのお友だちなのです」 「んー、まぁそうだね。うちの(ぼん)の目も恐いし」 あ、(ぼん)さんも珍しく威嚇してた――――。 こうして、一件落着となったわけだが。 「そう言えば……この前は霧連(むづら)くんも一緒にいなかったかしら……?彼は今日は来ていないのね。昨日はお休みされていらしたし……体調がすぐれないのかしら」 どてっ。いや……本当はそこにいるんだけど……。 ばらしてもいいのだろうか、これ。 「あ、あいつはその……、明日は来るよ」 との(ぼん)さんの言葉に、瑠夏(るか)さまは「それなら良かったです」と笑顔で頷いたんだけど……。 ちょっと椿鬼(つばき)……!そんな失笑してると(ぼん)さんに後で怒られるってば……!まぁ(ぼん)さんは今は瑠夏(るか)さまのかわいらしい笑顔に夢中だけども……! あれ……そう言えば例の件……。 うっかり頭隠(かみかくし)のひとたちと顔を合わせてしまったけれど何ともなかったわね。椿鬼(つばき)の婚約者になったから……その効果かしら。でも……結局私を狙った犯人は……誰だったのだろうか……?
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加