第1章

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 だって、妻の尻に敷かれるってかなり屈辱的なことじゃないの? 「そんなもの、あなたがべた惚れにしてしまえばいいのよ」 「……普通に考えて、無理だわ」  べた惚れにして骨抜きになんて出来るわけがない。だって、この私よ? (髪の毛は手入れなんて最低限だし、肌は日に焼けてる。令嬢らしいことはなに一つとして得意じゃないのよ……)  対するリリーは、髪の毛は手入れが行き届いていてつやつや。緩くウェーブのかかった桃色の髪は、愛らしさを醸し出している。色白で、肌はきめ細やか。  ……本当、双子なのが嘘みたいな違いだ。 (いや、これは私が手入れを怠ったのが悪いのか)  うん、納得。ここばかりは、仕方がない。 「いい? あなたはこの家の存続を一身に担っているの。……それがわかったら、大人しくパーティーに参加しなさい」 「……はい」  もう、本当になにも返せなかった。  だって、リリーは正論を言っているのだもの。 (それをあぁだこうだって言っているのは、私。……この場合、リリーが正しいわ)  この妹は、はっきりと正論をぶつけてくる。その所為なのか、私は彼女に口で勝てたためしがない。 「じゃあ、そういうことだから。……パーティー自体は二週間後。けど、その前日にはこっちに戻ってくるのよ」 「……はい」  これじゃあどっちが姉なのかわからないじゃないか。  そう思ったけれど、リリーのほうが私よりもずっとしっかりとしているから、仕方がない。  それくらい、ずっと昔から知っているのだ。
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