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けど、やっぱりこういう風に言われると無性に嬉しいっていうか、なんていうか……。
「ライナー先輩、ありがとうございました」
やっぱりライナー先輩はめちゃくちゃ頼りになる。
その一心でぺこりと頭を下げれば、先輩は「いいっていいって」と言いながら手をぶんぶんと横に振った。
「それにさ。……俺としても、アルス嬢が変に落ち込んでいるの、見たくないし」
「……先輩」
「あ、この後パトロールの当番だったわ。……じゃ、また後で」
「はい」
私の頭を数回ポンポンとたたいて、先輩がこの場を立ち去る。
少し乱れた髪の毛さえ、心地いいって思ってしまう。それほどまでに、私の気持ちは少しだけ楽になっていた。
「……それに、まずは形だけの参加でいいものね」
あの後もう一度お母様とリリーと、お父様を交えて話し合った。
結果的に、とりあえずは社交の場に慣れてみたらいいということになったのだ。
つまり、いきなり婚活……というわけではなくなった。それだけでも、少し気が楽だ。
「よし、が、がんば……ろう」
かといって、すぐに気持ちが切り替えられるわけでもなくて。私の決意を表した言葉は、しりすぼみになっていた。
「私が結婚して、バルハウス男爵家を存続させなくちゃ……だものね」
誰にも聞こえないほどの声量でそう呟いたとき。ふと、視線のようなものを感じた気がした。
なので、顔を上げる。そのまま周囲を見渡す。……特に、誰もいないと思うんだけれど。
「気のせい……?」
きょとんとしつつそう声を上げれば、後ろからいきなり肩をたたかれた。
「ひゃぁあっ!」
その所為で、大きく悲鳴を上げてしまった。
周囲の騎士たちが何事かとこちらを見ている。……いたたまれなくて、頭をぺこぺこと下げていく。
「アルス嬢。……そんな、驚かなくても」
「で、ですけど……」
振り返ってそちらに視線を向ける。……そこには、桁違いに美しい男性がいた。
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