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精悍で男らしい顔立ち。背丈は高くて、体格もがっしりとしている。
その漆黒色の髪の毛は乱雑に切られている。でも、この人は素材がいいから。……どんな髪型でも似合ってしまうのだ。
そして、彼のエメラルド色の目が私をじっと見つめている。……いや、睨みつけているが正しいのか。
「ど、どうしました、ヴィクトル様……?」
恐る恐る、彼と視線を合わせてそう問いかける。
すると、彼は「隣、いいだろうか?」と逆に問いかけてきた。……隣って。
そう思いつつ周囲を見渡す。……どこもかしこもベンチは埋まっていて、私の隣くらいしか空いていない。
「どうぞ……」
まぁ、私の隣が空いているのは先ほどまでライナー先輩がいたからだし。……空いていたら座りたいのは、人間の性だ。
「あぁ、感謝する」
ヴィクトル様はそれだけを言って、私の隣に腰を下ろした。
ちらりと彼の横顔を見つめる。その男らしい顔立ちは、数多の令嬢を魅了しているというだけは、ある。
(本当、顔もよくて、同期の中で一番の将来有望株。生まれも名門伯爵家。神様に愛されているといっても、過言じゃないわ)
そんなことを考えて、私は自分との差に項垂れてしまいそうになる。
……その良いところの一つくらい、私にくれてもいいじゃない。
(まぁ、仕方がないわよね。考えない方向で行かなくちゃ)
自分の頬をパンっと軽く叩いて、自分自身にそう言い聞かせた。
でも、なんだろうか。……少し距離が、近いような気がするのは気のせいじゃない、と思う。
(ヴィクトル様、もう少しあっちに寄ってくださってもいいじゃない)
物理的に肩身が狭くなっているんだけど……。
心の中だけでそう思いつつ、私はヴィクトル様のお顔を見上げる。瞬間、彼と私の視線が交わった。
「……アルス嬢?」
咄嗟に視線を逸らした。……一体、なんなんだろうか。どうして、どうして――。
(このお人、どうして私のことをじっと見つめていらっしゃるの!?)
もしかして、私の顔になにかついているんだろうか?
それとも、私の顔が変なのだろうか?
いや、同期として入団して、以来部隊も一緒。……今更変な顔だなんて、思われる筋合いはない……と思う。多分。
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