第1章

3/16
前へ
/16ページ
次へ
 ◇ 「はぁ? パーティー?」  久々に実家の男爵邸に帰宅した私は、お母様の言葉に怪訝な声を上げた。 「そうよ。いつもいつもリリーに任せっきりにしていないで、あなたもたまには参加しなさい」  ころころと朗らかに笑ってそう言うお母様。私は、自分の頬が引きつっているのがわかった。 「け、けどよ? 私、ドレスなんて持っていないわ」  それは真実。  私は昔からおしゃれとかお人形遊びとか。そういう女の子らしい趣味には一切興味を示さなかった。  その所為なのか、二十二歳になってもドレスにもアクセサリーにも強い興味を抱けていない。  ドレスを見れば「戦いにくそう」という感想を抱き、アクセサリーになんて「落としたらどうするの?」という感想を抱く。 「そんなもの、リリーに借りなさい。あなたとリリー、とてもよく体格が似ているのだから」 「う……」  その言葉には、上手い返しが思い浮かばなかった。  リリーとは私の双子の妹。昔からおしゃれとかお人形遊びとかが好きで、ザ・女の子っていう子。  年頃になってからは社交の場に度々繰り出し、情報を得てくる。口が上手くてフレンドリーで、周囲から何処か一目置かれる子。  ……男勝りな私とは、まさに真逆の存在だ。 「大体、いつまでも騎士として従事できるわけではないのだから」  ……お母様のおっしゃることも、もっともだった。 「二十三歳までは好きにすればいいとは言ったけれど、あなたもう二十二よ?」 「そ、それは……」 「そろそろ結婚、考えなきゃダメでしょう?」  それを言われると、辛い。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

180人が本棚に入れています
本棚に追加