180人が本棚に入れています
本棚に追加
◇
「はぁ? パーティー?」
久々に実家の男爵邸に帰宅した私は、お母様の言葉に怪訝な声を上げた。
「そうよ。いつもいつもリリーに任せっきりにしていないで、あなたもたまには参加しなさい」
ころころと朗らかに笑ってそう言うお母様。私は、自分の頬が引きつっているのがわかった。
「け、けどよ? 私、ドレスなんて持っていないわ」
それは真実。
私は昔からおしゃれとかお人形遊びとか。そういう女の子らしい趣味には一切興味を示さなかった。
その所為なのか、二十二歳になってもドレスにもアクセサリーにも強い興味を抱けていない。
ドレスを見れば「戦いにくそう」という感想を抱き、アクセサリーになんて「落としたらどうするの?」という感想を抱く。
「そんなもの、リリーに借りなさい。あなたとリリー、とてもよく体格が似ているのだから」
「う……」
その言葉には、上手い返しが思い浮かばなかった。
リリーとは私の双子の妹。昔からおしゃれとかお人形遊びとかが好きで、ザ・女の子っていう子。
年頃になってからは社交の場に度々繰り出し、情報を得てくる。口が上手くてフレンドリーで、周囲から何処か一目置かれる子。
……男勝りな私とは、まさに真逆の存在だ。
「大体、いつまでも騎士として従事できるわけではないのだから」
……お母様のおっしゃることも、もっともだった。
「二十三歳までは好きにすればいいとは言ったけれど、あなたもう二十二よ?」
「そ、それは……」
「そろそろ結婚、考えなきゃダメでしょう?」
それを言われると、辛い。
最初のコメントを投稿しよう!