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「大体、こんな男勝りで色気ゼロな私を娶りたいっていう物好き、簡単には現れないわ」
肩をすくめながらそう言えば、リリーは「ふぅん」と適当に相槌を打った。
でも、しばらくしてぐっと顔を近づけてくる。その水色の目が、きらきらと輝いていた。
「けど、少しくらいは婚活したほうがいいわよ?」
「……話、聞いてた?」
リリーの言葉に呆れたように言葉を返す。
そんな私を見て、リリーは「いい?」と人差し指を立ててその指でびしりと私を指す。
「婚活して結婚できないのならば、まだいいわ。問題は、あなたに婚活する気がちっともないことよ」
「……う」
確かに、それは間違いない。
それがわかるからこそ、私は視線を彷徨わせる。リリーはここぞとばかりに畳みかけてくる。
「今度、ハーティング伯爵家でパーティーがあるの。伝手を使って招待状をあなたの分も手に入れたから、一緒に行くわよ」
「……え、い、いやよ!」
どうして、よりにもよってハーティング伯爵家なのだろうか。
そう思って頬を引きつらせる私に、リリーは「ふふん」と言って胸を張った。
その態度がなんだか無性に気に障って、私は「絶対に嫌!」と意地になったように拒否する。
「大体、ハーティング伯爵家って、私の先輩騎士の実家よ?」
「知っているわよ」
「そんなところにドレスを着て行ったら、私は笑いものよ!」
バンっとテーブルをたたいて、はっきりとそう告げる。
だって、そうじゃないか。先輩騎士の実家ということは、その先輩騎士と親しい騎士もやってくるということだ。
……そんなの、冗談じゃない!
「けど、その先輩騎士はあなたによくしてくれているのでしょう?」
「だからといって、ほかの先輩騎士の全員がよくしてくれているわけじゃないのよ!」
リリーの言うことは間違いない。ハーティング伯爵家の次男である私の先輩騎士、ライナー先輩は頼りになる人。ちょっと厳しいけれど、それは後輩たちを思ってのことだと私たちは知っている。
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