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白画用紙が淡く色づいていくのを、私は無心で眺めていた。
赤、橙、群青色。
水をたっぷり含んだ水彩画のタッチが、色と色の境界線を次第になくしていく。
境界線をはっきりと際立たせたい時は、最初に塗った絵の具が十分に乾いてから新たな色を重ねるのがコツだ。
基本中の基本を頭の中で何度も確かめながら、手は機械みたいに、勝手に動いていた。
でも。
「やっぱり描けない……」
先ほどまで順調に動いていた右手の動きが、完成に近づくにつれてどんどん鈍くなる。
やがて震え始めた手から、絵筆はぽとりと地面に落下した。
筆についていた青い絵の具が、草の上で滴り、黒く沈んでいく。
描けない。
絵を完成させることが、どうしても私にはできない。私の心は半年前から真っ黒なままだから。
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