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本音を言えば告白して振られるのが怖くて避けていたのだろう。勉強が忙しいと言い訳し続けて、結局告白せずに卒業して疎遠になってしまった今、後悔してもしきれない感情が雪のように積もって溶けないでいる。
高校の思い出は、ほとんど晴翔との思い出だらけだ。体育祭や文化祭や修学旅行。どの記憶にも晴翔の横顔があった。
(ずっと私は......晴翔を見てたんだなぁ)
ずっと片思いしていた私。
それはきっと、今でも変わりないんだろう......。
(ほんと......好きなんだよなぁ)
会いたい──。
目的があるわけじゃない。理由があるわけでもない。
ただ顔を見たい。声を聞きたい。好きな人が今も生きてることをこの目で見たい。記憶じゃなくて今の晴翔に会いたい。無性に会いたい──。
「──えー、今日の講義はここまでです。次回は二日酔いの人達に注目したビジネス。二日酔いヘルパーの説明をします」
そんな叶わない妄想をしていると講義が終わり、教授が喉に負担を掛けながら声を張って学生に訴える。
「あー、あと退室する前にレポートを提出してくださいね」
私は荷物を持って席を立ち、教授の前にある教壇にレポートを置いて退室した。
今日の講義はこれで終わり、自由になった私はショッピングでも行こうかと思っていた。
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