消せる後悔、消せない後悔

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まだ笑い続ける美希。落ち着くどころか美希は口元を手で抑え、笑いはより大きくなりそうだった。 「──み、美希だって!! ボサボサで手入れしてなくて(ほうき)みたいなロングヘアーだったじゃないー!!」 私は美希の爆笑にやり返す気持ちで言い返すと、美希の白くて細い手が私の腕を掴み、揺らしながら謝ってくる。 「や、やめてよー!! あたしの黒歴史掘り返さないでよー!! ごめんってー」 可愛らしく懸命に細い腕で揺らしてくる美希に、私は小さい笑い声を出していると、ふと電車の窓から見える外の景色が視界に入る。 雲1つない青い空に優しく包まれた東京の街並み。5月の暖かい日差しを反射するビルの数々を見ると、私は今日も他愛のない幸せな1日を過ごしているのだと感じたのだった。 ──コーヒーのいい香りが鼻の奥を撫でる。 「いやー疲れたー......」 美希が顔にシワを寄せて言うと、私はコーヒーを一口飲んでから溜めてきた感情を吐き出す。 「まさか帽子選びで1時間掛かるとは思わなかったなー......店員さん途中から目が死んでたよ」 両手に帽子を持って試着を繰り返して厳選していく1時間。店員さんと私に意見を聞きながらの1時間。しかも結局買ったのは無難な色のベレー帽だった。 本人は満足のようだが、私としては勘弁してほしい。まだ脚に電気が走るような疲れを感じる。
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