消せる後悔、消せない後悔

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その時、美希の履くデニムパンツのポケットから陽気な電子音が聞こえる。美希はポケットに手を入れスマホを取り出すと、どうやらラインの通知音だったようで内容を見た美希が慌てて喋りだす。 「ご、ごめんっ! 急ぎでバイト入れられちゃったから行かなきゃっ!」 そう言うと美希が荷物をまとめ始める。私は今日予定がないが、このままお店にいてもすることがなく、美希と一緒にお店を出て別れた。 子犬のような小さい歩幅で遠ざかっていく美希の背中を見送って帰路につく。 ──袋から今日買った水色のワンピースを取り出す。新品のワンピースを傷付けないように緊張しながらタグをハサミで切り、タンスにしまう。 「......」 美希との会話が頭にずっと響いている。 (ずっと1人で、やつれて退学して......晴翔大丈夫かな......) ふとソファーに置いてあるスマホに目を向ける。黒い画面で沈黙しているそのスマホに、晴翔とのライン画面を表示させようと一瞬思う。 だが2年疎遠だった気まずさがハードルを上げている。 (今......ラインしてもきっと迷惑だよ.....ね?) (それに今5月だし......忙しいよね......。また今度でもいいよね.......)
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