占い師です

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そして次は、耳が悪くなった。 補聴器でも完全にカバーできないほどに。 更に足腰が急激に衰え、両手もしびれるようになった。 俺が六十八歳の時だ。 住んでいた古アパートが夜中に家事になった。 住民二十名が死んだ。生きていたのは俺だけだった。 俺が七十の時だ。 ふと気がつくと、自分の名前がわからなくなっていた。 しばらくして思い出したのだが、自分の名前すら忘れてしまうとは。 少し前から記憶力が壊滅的な状態となっていたが、忘れるはずのない古い記憶も危うくなってきたようだ。 これが痴呆というやつの始まりか。 でも俺は、あの男の言う通りなら、あと三十年生きなければならないのだが。 それもたった一人で。        終
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