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おまけに目の前の男ときたら、その顔、その服装、その声、そのしゃべり方が全てにおいて、一般的な占い師とは程遠い。
全くもって説得力がない。
「あらーっ、あなた疑ってますね。もう一度言いますよ。私の占いは絶対です。嫌でも当たります。いや、私が当てて見せます。なにがなんでも当ててみせます。間違いない」
「わかったわかった」
どうでもよくなった俺は、その男を締め出した。
男はやけに通る声で「絶対に当たりますから」とか言っていたが、やがていなくなった。
――変な奴もいたもんだ。
俺はそう思ったが、さして気にしていなかった。
俺が五十二歳の時だ。
会社の同僚と五人で車に乗っていたが、なぜか車が反対車線に飛び出して、トラックと正面衝突した。
同僚四人が死んだが、俺だけ生き残った。
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