ポケットの中からコイゴコロ

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「兄貴がやらかしたせいで、俺まで中学の間スマホ禁止にされてんの。めっちゃくちゃ理不尽。ゲームに課金しまくったの俺じゃねーってのに!そのせいで、こんな古典的な方法に頼るしかないわけ、おわかり?」 「ああ、うん。それは同情する」  それに、と彼は唇を尖らせる。 「スマホを手に入れたら、すぐにそれでコクれるかっていうと微妙じゃね?だって相手の連絡先知らないと連絡できないんだぜ。気になる奴の電話番号とかメールアドレスとかどうやって訊きだすんだよ。……そりゃ、他の奴経由で訊いてもいいけど、そうした時点でそいつにはバレるし?そもそも、教えてないやつからメール送られてきたらそれだけで印象駄々下がりじゃん……」  どうやら、竜馬は竜馬なりに考えていたらしい。ほう、と私は感心させられてしまう。なるほど、そう考えると一見古臭いように見えて、手紙という手段は王道なのかもしれなかった。  まあ、“見知らぬメールを怖いと思う女子”が、“見知らぬ手紙を怖いと思わないかどうか”については非常に微妙と言わざるをえないが。 「……ま、言いたいことはわかった。あんたの状況じゃ、ラブレターに頼るしかないのかもね。直接コクる勇気がないなら」 「うぐっ……」 「でも、ラブレターってのは字だけ綺麗でも駄目じゃない?ちゃんと、想いがこもったものを書かないと。相手のどんなところが好きだとか、どんなところを可愛いと思ってるんだとか。あとは……まあデートでどういうところに行きたいとか書く人もいる、かも?ちょっと勇み足だけど、そこが健全な場所だと女子は安心するかもだし」 「そ、そういうもんか……」  竜馬は慌てて生徒手帳を取り出し、余白にメモを取っていく。きっと、ラブレターの書き損じとは比較にならないくらいぐっちゃぐちゃの字になっていることだろう。  放課後の教室。ここには私と彼しかいない。周囲で見ている人もいないし、今日はお互い用事もない。焦る必要なんかどこにもないというのに。 「ああ、一応言っておくけど。胸がでかいのが好きとか書いたらセクハラだからね?」  私はびしっと彼の前に人差し指を突き出した。 「あんたが巨乳好きなのは知ってますけど。普通の女子は、胸とかお尻とかばっか見てるエッチな男子に惹かれたりはしないんで。むしろドン引きしてそれだけでマイナス百億ポイントってなもんだから。あんたはちょっとイケメンだけど、その程度の補正じゃ取り返せないから」 「そ、それくらいわかってるって!」 「じゃあ、どういうところが好きなわけ?相手の見た目より、性格褒められた方が喜ぶ人多いと思うけど」
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