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ポケットの中からコイゴコロ
小学校の時からの私の幼馴染、竜馬は昔っからおっちょこちょいだ。中学生になった今でもまったく変わっていない。
例えば、学校にコートを着てきたら、うっかり制服の上着を着てくるのを忘れただとか。
今日は一時間目から水泳があるからと海パンを履いてきたら、替えの下着を持ってくるのを忘れたとか。
理科の移動教室なのに、前の国語の授業で爆睡したまま置いていかれたりとか。
あとはそう、調理実習でうっかりボヤを起こしかけたりとか――まあいろいろと。ちなみに理科の移動教室の日は、たまたま私が風邪で休んでいた日だった。友人にその話をあとで聞かされて頭を抱えたのである。
明るいし、友達も多いし、女子にも親切で優しいのだが。いかんせん、肝心なところがヌけているせいで目が離せない。そのせいだろう、私がこんなお節介で世話焼きな性格になってしまったのは。
今日だってそう。
「あ、ちょ、竜馬!」
彼は教室の椅子の背もたれに制服の上着をひっかけたまま帰ろうとした。シャツはともかく上着は代わりがそうそうないはずだ。忘れていったら確実に明日困るだろう。
慌てて上着を持って教室を飛び出した、その時である。
「ん?」
彼の制服のポケットの中から、何かがぽろっと廊下に落ちたのだった。それは、くしゃくしゃに丸めた数枚の紙きれである。なんだろう、としゃがみこんで拾い上げる私。
「あ、馬鹿!里琴!」
気づいた竜馬が振り返って制止するも、もう遅い。私はその丸めた紙切れを広げてしっかり読んでしまった後だったのだった。
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