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恋か、執着か ―現在―
以来、雨が降るたびに、重くのしかかる気持ちを、見ないように蓋をしてきた。
穢らわしい過ちは、あの日に見た悪夢だったんだと、自分に言い聞かせて。
実際、アルコールの力を借りていたせいもあってか、西崎とのことはオレの記憶のなかから徐々に薄れつつあった。
──ただ、こびりついた罪悪感と自己嫌悪だけは、なかなか無くなりはしなかったけど。
そうして、あの……瑤子さんと初めて出会った、雨の日を迎えた。
❖
「斎藤先輩みたいな人じゃなきゃ、だめなんですか?」
──他に何人もの女生徒と『付き合ってる』ような男と別れて欲しくて。
「じゃあオレと、付き合ってくださいっ」
──別れたと聞いたとたん、速攻で告白して。
「とにかく、オレは本気だし、初めて会った時からずっと気になってて……笑った顔とか、もっと近くで見てみたいって、思ったからで……」
──必死で、夢中で、彼女の側にいられる『権利』を手に入れた。
大人びた表情も、憂いを帯びた眼差しも、オレを惑わすには十分だったけど。
「尚斗くんが、好きなの。だから、恥ずかしくて顔がまともに見られない」
ようやく想いが重なって向けられた微笑みは、オレのなかの醜い感情を、全部、浄めてくれるようで。
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