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ずっと側にいられたら、くだらない自尊心が起こした過ちも、低俗だと蔑んだ心持ちが自分のなかにもあったことも、初めから無かったように、日々を送れる気がした。
「私……尚斗くんが好きよ。だから、謝らないで」
嫉妬にかられて斎藤先輩とのことを疑った時も、あきれることもなく、赦してくれた。
──こんなに醜い感情も、その笑顔に触れるだけで、癒やされた。
「あのね、尚斗くん。私、蒼──斎藤くんとは」
──だから、その先は、聞かなくてもいいよね?
お互いに、全部をさらけ出さなくても、付き合っていけるよ、きっと。
──自分が無くしてしまった『綺麗なモノ』に、すがりたい気持ち。
それは、“恋”ではなく“執着”なんだろうか。
❖
「ナオくん、ちょっといい?」
部室の掃除をしていると、西崎がそんな言葉と共に入ってきた。
オレが瑤子さんと付き合っていることに対して、西崎が面白く思っていないことは知っていた。事あるごとに、訊きもしない瑤子さんの『良くない噂』を吹き込んでくるからだ。
またその手のことかとうんざりして、いろいろと話しかけてくるのを無視して掃除に集中していると、西崎がいきなり、キレた。
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