再会 ―六月―

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──無言。これ以上の無駄口は、必要ない。 そう思って黙りこくるオレの耳にキャプテンの苛立(いらだ)った声が届いた。 「おいっ、斎藤(さいとう)はどうした!? 誰か呼んでこいや──」 「オレ、見て来ます!」 今中に付き合うのに辟易していたオレは、いうが早いか駆け出した──。 斎藤(あお)。女生徒の間じゃ、かなり有名で人気のある二年生だ。 女好みのルックスに、学年トップクラスの成績。 中学だけ一緒だった姉ちゃんの言葉を借りると、 「嫌みなくらい非の打ち所がない優等生で、それでいて女がらみの噂が絶えない、私の嫌いな、女を馬鹿にした意味での優しいタイプ」 だそうだ。 オレは斎藤先輩があまり好きではなかった。はっきりいうと、嫌いだった。 練習はよくサボるし、なんに対してもいい加減な態度で、真剣さが足りないっていうか……とにかく、嫌いだった。 新校舎にある二年生の全クラスを見て回っても、先輩の姿は見当たらなかった。 下駄箱に先輩の靴は残っていたので、帰ってはいないだろうと、仕方なく一階の教室から四階の図書室まで探したけど……結果は同じだった。 「──斎藤なら、美術室で見かけたけど?」 そう声をかけられたのは、旧校舎の三階と四階の踊り場だった。
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