再会 ―六月―

3/4
前へ
/18ページ
次へ
女かと思うような声質と、半袖からのぞく細くて白い腕。 顔立ちは、どう見ても女なのに、オレと同じ男子生徒の制服を着ている。 上履きから見て、二年生らしい。 「そう、ですか。どうも……ありがとうございます」 ぎこちなく礼を言ってから脇をすり抜けかけた時、その人が小さく笑ったような気がした。 ───でも、君には刺激が強いかもね───。 そんな独りごとと共に。 いぶかしく思いながら、美術室へ小走りに向かう。 キャプテンのあの様子じゃ、これ以上の遅れは、オレに対しても怒りの矛先が向かうかもしれない、と思いながら。美術室の後ろ扉の小さな窓ガラスから、室内が窺えた。 誰も、いない。 そう判断しかけたオレの視線の対角線上にあたる窓際。そこに置かれた絵に、人の頭が重なった。 いた……! やっと見つけた斎藤先輩らしき姿に、はっきり見えるだろう前の扉へと駆け寄り、勢いよく開けた。 「あっ……」 目に入ったのは、女生徒の上に覆いかぶさっている、斎藤先輩だった。瞬時に、自分がまずい場面に踏みこんでしまったことに気づく。 けれども目だけはしっかりと、乱れたスカートによって(あら)わになった、白くてやわらかそうな、ふくらはぎから太ももにかけてのラインを追いかけていた。 「関谷……」
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加