再会 ―六月―

4/4
前へ
/18ページ
次へ
振り向いた斎藤先輩がオレを見て、驚きとも怒りともとれる表情をする。その視線が向けられたことによって、あわてて目を伏せた。 心臓がばくばくと音を立て、ちらついたよこしまな映像が、頭のなかから一瞬にして()き消える。 「あ、あのっ。オレ、別に見るつもりなんかなくて! 先輩が美術室にいたって聞いたからで、その、なんていうか……」 自分でも何を言っているのか分からないほど、混乱していた。言いながら、居心地の悪さに視線をさまよわせる。 じっとしては、いられなかった。 ───斎藤先輩の影に隠れるように、相手の生徒が身を起こすまでは。 えっ……。 目が、合った。 見覚えのある顔。 忘れるはずもない、綺麗な、その顔立ち。 彼女と不つり合いなこの状況にオレは動揺せずにはいられなかった。 なんで……よりにもよって、斎藤先輩と……先輩、なんかと……! 眉間にしわが寄るのと同時に、目をそらした。 心のなかの、ささくれ立った想いがそうさせていた。 「練習、来てください! キャプテンが、怒ってますので。失礼します!」 思いきり、勢いにまかせて頭を下げる。一秒でも、同じ場所にはいられなかった。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加