春の嵐 ―四月―

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春の嵐 ―四月―

部室の掃除当番は、二度目だった。 練習後、誰もいなくなった頃を見計らって部室に戻ってきたつもりだったけど、なかから話し声がした。 「───お疲れっす」 三年の先輩が二人、笑いながら着替えてるのが目に入り、頭を下げる。 確か、松井(まつい)先輩と小早川(こばやかわ)先輩だっけ。 オレのあいさつに軽く応じた小早川先輩の口が続けた。 「お前、当番か? わりぃな、もうちょい待っててくれるか?」 「あ、いえ、雑誌でも読んでるんで、気にしないでください」 部室の奥に置かれた、ベンチの上のサッカーマガジンを差す。小早川先輩はうなずいて、松井先輩の話をうながした。 オレは言葉通り、二人の先輩が着替え終わるのを待つため、ベンチに腰かけた。 「───でさ、あいつ一人であんあん言いやがるワケよ。イッちゃう~とか言われても、俺のほうはお前のユルユルなピーじゃイケねぇっての!」 「おいおい、そりゃ言いすぎだろ。向こうは向こうで、気ぃ遣って、感じたフリしてるだけかもよ?」 「んな気遣いいらねーから、もっと俺を悦ばせる努力をしろってんだよ」 「お前な……何様だよ?」 「松井サマだろ?」
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