春の嵐 ―四月―

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なんか……低俗な話、してんだなぁ……。 オレは、聞くともなしに聞いた先輩らの話に、雑誌をめくりながら、こっそり息をついた。 「──気に入らねーなぁ、そのツラ」 バンッ……と、ロッカーが閉まる音がして顔を上げると、松井先輩がオレのほうを見ていた。 不愉快そうに鼻の頭にしわを寄せ近寄ってくるなり、オレの前髪をつかむ。 口もとをおおげさにゆがませた松井先輩が、鼻先で笑った。 「テメェだって、ヤッてんだろ、シコシコと。一人でヤんのか女遣うのかの違いだろ。 オトコ知らねー頭でっかちの女みてぇなツラしてんじゃねーよッ」 そこで、ゴミでも投げ捨てるかのように、髪を放された。と、同時に、みぞおちに蹴りが入る。 身体を折って、むせ返るオレの耳に、小早川先輩の苦笑いが聞こえた。 「松井、そのへんで止めとけよ。オレらにはギャグにしかなんないことも、関谷には生々しく聞こえんだよ」 「……ったく、ドーテー君は扱いが面倒くせぇなぁ」 舌打ちして松井先輩が去って行き、残された小早川先輩が、オレの肩を叩きながら言った。 「災難だったな、関谷。けど、お前も、もう少し頭やわらかくしとけよ? ウチの部、クセ悪い奴が多いからな」
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