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【佐藤 葉介視点】
目の前で小さく俯く彼は、昔と同じく泣き出しそうな表情を必死で隠していた。
僕は後ずさる彼より大きな一歩で彼に近づき、彼の目の前で立ち止まる。
ああ、僕の悠樹
久しぶりのその柔らかな髪にそっと触れる。
「僕は、君に謝って欲しいわけじゃないよ」
「謝って済む問題じゃないことくらいわかって…」
「僕は悠樹が心配だったよ。昔みたいにどこかで一人泣いていないか。元気で明るくて小さな、僕の大好きだった悠樹ともう一度会いたかった。」
記憶の中より随分背が伸びたのに、近くで見ると少し痩せているように思う。
だけど綺麗な瞳は僕が好きだったあの頃のまま。
悠樹を守るためにダンプカーの前に出たことを、僕は1度も後悔していない。
一命を取り留め、この頬に残った傷を見るたびに僕は君のことを思い出す。
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