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プロローグ
骨の髄まで焼き尽くされるような火の光、
どこを見渡しても何もない荒れ果てた大地、
上を見上げれば雲一つない空、
永遠に続いているかのようなオレンジ色の景色、
そんな広大な砂漠のど真ん中にポツンとその村はあった。
何時できたかもわからない、
誰が住んでいるかもわからない、
そもそも人がいるかどうかもわからない、
何もかもわからない奇妙な村。
悪魔が住んでいる、怪物が住んでいる、どこかの国の実験場になっている、噂は噂を呼び、多くの情報や口コミが飛び交い、興味をもつものも増えていった。
いつしか噂は世界中に広がり、村を調査しようと独自に動くものも現れた。広大で過酷な砂漠を越え、その村に辿り着くものもいた。
しかし、彼らは戻ってはこなかった。
村に辿り着いたものは全員行方が分からなくなったのだ。
空、陸、様々な方法で、彼らは捜索された。
でも、彼らは見つからなかった。
それからも、捜索のため、調査のため、救出のために何度か人が送りこまれた。
しかし、その全てがことごとく消えていった。
人々は恐怖した。
当然だ。この世界に得体のしれない何かが潜んでいるのだから。
調査も捜索も、あの村に関する全ての行動が世界中でピタリと止まった。
人々は理解した。
あの村には手を出してはいけない、関わってはいけないと、
そうして次第にあの村に関する噂は止み、人々の記憶からは消えていった…。
あの村での騒動があって10年後、砂漠のど真ん中で火が出たそうだ。当初は誰も気にも留めなかった。砂漠は暑い、とてつもなく、理不尽なほどに。そんな暑さの中だったら火くらい出るだろうと誰しもが思っていた。
だが、突然人々は興味をもち始めた。
その炎で燃やされていたのはあの村だったのだ…。
訪れた人々を消し去るその村は、その理不尽な炎で消えてなくなったのだ。
炎の勢いとは対照的に、その村に対する動きは多くなった。調査に行く人もいた。消えた人を探しに行くものもいた。
村の残骸を、燃えカスをかき分けて人々は調べた。消えた人の行方を、この村の正体を。
そうして調べていくうちに奇妙な事がわかった。あの村には人が住んでいたのだ。痩せこけて、とても弱っているが、確かに燃える前まで生きていた人間はいた。
しかし、調査に行き、消えた人々の死体も燃えカスも、調べられる範囲ではあるものも調べた結果なかった。
つまり、あの村では住んでいる人間が調査に行った人々を殺す、もしくは何かしらの理由で死んだあと隠した、もしくは消したということになる。
ではどこへ行ったのか。
ここで一つ仮説が生まれた。
食べたのではないのだろうかと…
考えてみると当然だ。そこは過酷な砂漠のど真ん中、食料なんてまともにないだろう。
だが、そこでわからない事がある。
なぜそんなところに人が住んでいるのか、というかなぜ生きれたのか。
過酷な環境、まともに食料も水もなかったという状況、そんな中で健康に生きるどころか生きることさえも難しいはずなのに住んでいた人の死体の中にはほとんど健康なものもあった。
炎に関しても不自然な点があった。
調べた結果、炎がでていたというのに逃げる人はいなかった。そもそも突然火がつくようなことがあるだろうか。
死体に関しても、火で燃やされて死んでいた人もいたが、銃やナイフなどの武器で殺されていた人もいた。
もしかしたら、この村は誰かに襲われたあと、燃やされたのではないだろうか。
では、誰に襲われたのか。
この村が襲われたあと、突然現れた組織があった。
この世界は多くのことに囚われている。
恐怖、欲求、好奇、他人、人は大小異なるが何かの鳥籠に囚われている。
世界ではなぜ争いが起こるのか、
それはこの鳥籠の中に囚われているからではないのだろうか。
欲があるから、他人を憎むから、結局争いというのは何かに囚われているのが原因なのではないのだろうか。
平和を実現するためにはその鳥籠を壊せばいい。囚われているものから自由になればいい。
自称平和団体 「鳥籠」
それがその組織の名前だった。
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